2016.04.25更新

生活費は請求できます

夫婦は収入に応じて互いの生活費を負担しなくてはなりません。より収入の高い配偶者がこの義務を怠っているときは,より収入の低い配偶者は,生活費の分担を請求できます。この生活費のことを婚姻費用といい,家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てることができます。

婚姻費用の額は互いの年収,子どもの数・年齢に応じ,養育費・婚姻費用算定表というツールを利用して割り出します。費用に関する争いを長期化させず,早期に支払いを受けることが期待できます。算定表はネット上でも閲覧できます。

よくある反論

よく当事者の間で見受けられる主張として,「子どもに会わせないなら払わない」,「貴方にも収入があるのだからそれで生活しなさい」といった言い分があります。しかし,子どもと会うことと婚姻費用(養育費)の支払は無関係ですので,こうした主張は認められません。子どもとの面会は,別途面会交流調停で解決することになります。また,婚姻費用(養育費)は収入に応じての分担ですから,収入があるから請求できないというものでもありません。

このほかに,「相手の方が不貞がばれて勝手にでていったのだ」という反論もままあります。不貞をした配偶者は夫婦の義務に反しているわけですが,にもかかわらず婚姻費用だけを請求することは権利濫用的であり,許されないことがあります。これに対して,単に不和から別居に至った場合、たとえ一方が勝手に出て行ったとしても婚姻費用の分担が必要になる可能性が高いでしょう。婚姻費用を請求された側から見ると,別居の原因がなんであるかは重要です。

月々の生活にも事欠く,そんなときは?

一方の配偶者が専業主婦(夫)で収入が無い場合,生活費が支払われないことは死活問題になります。調停が成立するのを待っているうちにお金がつきてしまう,そんな場合には審判前の保全処分を調停と共に申立て、仮払いを求めることになります。本来なら裁判所での手続を経て,相手に支払義務があるのか,いくら支払うべきなのかを決めるものですが,仮払いは結論をいわば先取りして相手に支払を命じるものです。収入はないけれども独身時代に貯めた預金がある,なんていう場合には先払いを求める必要性が否定されるかもしれません。生活を確保するための緊急の手段ということです。

月の暮らしにも困るような場合ですから,弁護士費用も心配になると思います。そこはご安心下さい。ほとんどの方に法テラスの利用を勧め、費用を立て替え払いしてもらっています。

ご相談に際して

夫婦の収入がわかる資料があるとベターです。源泉徴収票,課税証明書,給与明細書などをお持ち下さい。

投稿者: 弁護士石井康晶

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