2016.06.28更新

今回は主に被害弁償について。加害者に怪我を負わされた場合を想定してみます。

1 示談

被害弁償を受ける手段としてまず考えられるのが,加害者から金銭賠償を受ける示談(契約)です。

刑事処分をまつ加害者としては,処分を軽くするために示談をするインセンティブが働きます。被害者としても早期に賠償を受けられるこ    とから,示談自体は悪い話ではありません。もっとも,妥当な金額は怪我の程度によって変わりますし,加害者が十分な資力を持っておらず十全な賠償を受けられるとは限りません。そのため,加害者が提示する金額は妥当かどうかは弁護士と相談の上で判断した方がいいでしょう。

また,刑事処分,とくに起訴猶予や略式命令(罰金)がでたあとだと,処分を軽くするために示談をするという加害者側の動機が失われてしまうため,示談できる可能性が下がってしまいます。特に,「示談すると加害者に有利になるため裁判が終わるまで示談しない」という考えをお持ちの場合,裁判のあとは最早示談に応じない可能性があることを考えなければなりません。相談はお早めに行かれると良いでしょう。

2 犯罪被害給付制度

重い怪我を負ったときや後遺症が残ったとき,考えられるのがこの制度の利用です。

参照 http://www.npa.go.jp/higaisya/shien/kyufu/seido.htm

最寄りの警察署や県警本部にお訪ねになれば詳しい情報を得られるでしょう。重い怪我というのは,加療期間1月以上かつ、入院期間3日以上を指します。もっとも,支払われるのは1年を限度として、保険診療による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額の合算額ですので,慰謝料までカバーするものではありません。完全な賠償を目指すものではないということです。

3 民事訴訟・損害賠償命令

1でも2でも損害をカバーできないときは,これらの制度を利用して完全な賠償を得ることを目指すことになります。

賠償に含めて考えられるのは,大きく実費・逸失利益・慰謝料です。実費は治療費・入通院費・入院雑費等実際に掛かった費用です。領収証を大切に保管しておいて下さい。逸失利益は,犯罪被害に遭わなければ得られたであろう利益とお考え下さい。休業損害・労働力を一部喪失した場合は喪失の度合いに応じ減少した収入などが考えられます。慰謝料は精神的苦痛です。入通院期間や後遺症の程度に応じておおよその額が定まります。

民事訴訟は一般に時間がかかり,そのぶん弁護士費用も高額になりがちです。また,証拠は被害者側で集めて被害に遭った事実と損害額を立証しなくてはなりません。これに対して損害賠償命令は,早期に終わる可能性があり,刑事裁判での証拠をいわば流用するため,立証するのはおおよそ損害額に絞られてきます。このように時間と手間の面でメリットのある制度ですが,そもそも刑事裁判にならなかったケースでは利用できません。また,加害者が控訴し,その間に損害賠償命令がでて支払った場合,有利な情状として主張される可能性があります。また,そちらの制度にせよ,賠償資力がないと判決(命令)は絵に描いた餅ですから,手続を利用するかどうかも相談の上慎重に決める必要があります。

投稿者: 弁護士石井康晶

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