持ち家に住んでいる場合,離婚に際して家をどうするかは大きな問題だ。売却するのか,どちらかが住むのか,どちらかが住むとしてローンや固定資産税の負担はどうするか?名義人ではない妻が名義人である夫に対して,離婚後もローンを払うことを希望することは珍しくない。しかし,その希望が通っても,将来にわたって住居が安泰になるかはわからない。今回の解決事例はまさにそういう問題です。
1 相談
40代の男性。数年前に元妻と協議離婚したが,そのとき男性名義の住宅に元妻と子どもたちを住まわせ,ローンを払い続けると約束していた。しかし,収入が減って今後増収の見込みも立たないため,これ以上ローンを払い続けることが難しくなってしまった。別の弁護士の元に行ったら自己破産を勧められたが,破産はしたくない。どうしたらいいか?
2 方針
多額のローンがあり,家を残すつもりもないときは自己破産が手っ取り早い方法ではあるが,本人の意向に反するので,交渉で立ち退きを求め自宅を売却することにした。とはいえ,ただ出て行って欲しいと言っても相手にとって受け入れるメリットは全くないため,養育費の増額と転居費用の負担を対案として用意することとした。
3 交渉
相手方は,慰謝料代わりにローンを払うことにしたので,ローンを払わないなら慰謝料を求めると主張し当初から難航した。結婚当時の不満をつらつら述べる手紙を受けとったが,法的に慰謝料を払うような問題ではなかったため,説得を図った。当時の愚痴を聞いている内に相手方の態度も軟化し,養育費の上乗せ,転居費用の一部負担を条件に立ち退きに合意してもらった。最終的には「気持ちを解ってもらった」としてお礼を言われるまでになった。
4 感想
こちらに法的な権利(この場合は立ち退き請求)がない場合、お願いベースで話を進めるしかないことがある。今回もそうした件だった。相手方の言い分を傾聴し続けたことが結果に繋がったのだろう。
これから離婚しようという方は,住宅の取扱いについて問題になる可能性が高い。ローンを配偶者に払わせる場合,いつまで支払が続くか,相手の経済力や性格を考える必要があると思う。特に子どものためではなく,元配偶者のために長年ローンを払い続ける人はそうはいないだろうから,子どもの有無も大切だろう。逆に支払約束を求められている側(多くは夫)は,本当に払い続けられるのか,途中で気が変わっても簡単には決めたことを覆せないことに注意するべきだ。